断熱材の選び方を知りたい人向け!まずはここに着目しよう|断熱リフォームの匠

コラム

投稿日 2018.09.19 / 更新日 2021.05.24

断熱材

断熱材の選び方を知りたい人向け!まずはここに着目しよう

他の断熱材と比べてみると

WRITER

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矢崎 拓也

環境省認定うちエコ診断士

大学卒業後、断熱にまつわる資格をいくつも取得し、自ら調査や補助金申請の手配、セルロースファイバーの施工から窓の取付まで行える業界でも異色の人物。「日本中の住宅性能の低さを解決したい!」と大きな夢を原動力に戸建住宅の断熱リフォームに取り組む。

現在市場には様々な断熱材が出回っています。断熱材と一概に言っても、形状や性能など、様々な特徴があります。実際にインターネットで「断熱材」と検索すると断熱材に関するたくさんの情報を得ることができます。

とはいえそれぞれの断熱材には長所と短所があり、とらえようによってはお互いに相手の悪口を言い合っているように見え、逆に混乱してしまうこともあるのではないかと思います。

このページでは「結局どの断熱材を使えばいいのかよくわからない!」という人のために断熱材の選び方についてご紹介していきます。私たちとしては断熱材の選び方のポイントとして、以下の3つの性能に注目することをお勧めします。

・ 断熱性
・ 耐久性
・ 安全性

 
それぞれの性能について詳しく解説していきます。もしかすると「そもそもどんな断熱材があるのかもよくわかっていない!」という方もおられるかもしれませんので、まずは現在市場には具体的にどのような断熱材が出回っているのかもご紹介していきます。

断熱材の選び方①:それぞれの断熱材の大まかな特徴を知る

まずは現在どのような断熱材が住宅に使われているのか見ていきましょう。断熱材は原料となる素材により大きく繊維系断熱材発泡プラスチック系断熱材にわけられます。

形状や特性などは個々の種類で違いがありますが、基本的な性質もこの2種類に区分できます。いずれの断熱材も基本的な考え方は「断熱材の中に空気でできた層を作って熱を閉じ込める」ことです。

繊維系断熱材

  • グラスウール
  • ロックウール
  • セルローズファイバー

…など

繊維系断熱材は細かい繊維状の素材でできており、その隙間の中に空気を閉じ込めて断熱材としての効果を得ていることが特徴です。繊維同士の密度が高くなればなるほど断熱性能も高くなります。繊維とは具体的にはガラスが原料のグラスウールや鉱石が原料のロックウールなどがあります。

繊維系断熱材の中でもパルプ・新聞古紙から作られたセルローズファイバーや、羊毛から作られた羊毛断熱材などの自然素材で作られたものは、自然系断熱材と呼ばれることもあります。

発泡プラスチック系断熱材

  • ビーズ法ポリスチレンフォーム
  • 押出法ポリスチレンフォーム
  • 硬質ウレタンフォーム
  • フェノールフォーム
  • ポリエチレンフォーム

…など

発泡プラスチック系断熱材は合成樹脂などの素材を発泡させ、内側に無数の小さな空気の泡を閉じ込め、その泡の層により熱の移動を防いで断熱効果を得ています。発泡プラスチック系断熱材には工場で加工された状態で出荷されるタイプの断熱材と、現場で吹き付けて発泡させるタイプの断熱材の2種類が存在します。

断熱材の選び方②:断熱性に注目する

まずは断熱材としての性能を発揮できるかどうかに注目しましょう。「そんなの当たり前じゃないか」と思うかもしれませんが、カタログで見たときの断熱性能に比べて、実際に施工してみると断熱性能が大きく低下してしまうケースがあります。

確かに理論上の断熱材の性能は断熱材が分厚くなればなるほど、密度が高くなればなるほど向上していきます。しかしその断熱材をどんな業者がどのような物件で使用するのかによって断熱材のパフォーマンスは大きく変わってしまうのです。

例えば、グラスウール断熱材について、「独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構」の「住宅の次世代省エネルギー基準と指針」内で、施工の状態による断熱欠損について次のように説明しています。

断熱欠損について

通常の施工状態に対して、押し込み過ぎたり隙間を残した状態だと断熱性能が低下し、ひどい場合は半分ほどになってしまうとされています。

これは施工業者の技量が関係しているのはもちろんなのですが、先ほどもご紹介したようにその断熱材を使う状況によっても変わってきます。

例えば新築の物件に床下断熱材を充填するのであればスケルトン状態になっている状態の床に上から充填していく事ができるので先ほどのような欠損は起きにくいと思われます。

しかし既存の建物にリフォームで断熱材を床下から入れるのであれば硬質な断熱材では小さな隙間まで漏れなく断熱材を充填するのはむずかしいので、その分断熱欠損が発生して本来の性能を大きく下回ってしまう可能性があります。

それ以外にも、新築の物件でも筋交がある部分にボード状の断熱材を充填させる場合は、一度既存の断熱材が物件にフィットするように手作業で加工する必要があるので、施工業者の力量が問われます。物件によって断熱材との相性がある事を覚えておきましょう。

断熱材の選び方③:耐久性に注目する

発泡プラスチック系断熱材は経年による劣化に注意

断熱材の長期的な性能変動についても、しっかり把握しておいたほうがいいでしょう。発泡プラスチック系の断熱材は、経年により「空気置換」と呼ばれる現象により素材が劣化し、熱抵抗値が低下してしまう事があります。発泡プラスチック系の断熱材でも、劣化の度合いは素材により1~20%と大きな差が見られます。「独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構」の「断熱材の長期断熱性能評価に関する標準化調査成果報告書」内に断熱材の経年劣化を想定した熱抵抗補正係数が公開されています。

断熱材

補正係数

ビーズ法ポリスチレンフォーム

0.98

押出法ポリスチレンフォーム

0.88

硬質ウレタンフォーム

0.81

吹付硬質ウレタンフォーム(現場発泡)

0.75

フェノールフォーム

0.92

ポリエチレンフォーム

0.99

 

補正係数が1より小さくなっているものほど、経年により断熱性能が落ちやすいことを意味します(25年後の経年劣化を想定しています。)この結果は、断熱材表面の空気置換を防ぐためのスキン層が無い状態での想定であると思われますが、発泡プラスチック系の断熱材はスキン層の有無で経年劣化の度合いが大きく違ってきますが、やはりこれも施工時のミスなどでムラができ性能に大きな差が生まれることがあるので注意が必要です。

壁断熱は経年のズレがカビ発生の原因になることも

断熱材のカビ

繊維系の断熱材に関しても、素材そのものは丈夫であっても、経年により断熱材が沈下してできる隙間により断熱欠損が発生したり、壁の内側の結露で断熱材が濡れてしまい、性能低下につながる事があるので注意が必要です。これは施工のクオリティが大きな要因となっているので、信頼できる業者にお願いするようにしましょう。

断熱材の選び方④:安全性に注目する

いくら性能の良い断熱材でも、健康に害を及ぼしてしまうようであれば本末転倒です。安全面で確認しておくべきなのは、発がん性の有無とホルムアルデヒドの発散等級でしょう。

発がん性物質の有無

発がん性は、国際がん研究機関 (IARC)により、「IARC発がん性リスク一覧」が公開されています。

各グループの発がん性のリスク

所属する主な物質

グループ1(ヒトに対する発がん性が認められる)

ホルムアルデヒド、アスベスト、タバコなど

グループ2A(ヒトに対する発癌性がおそらくある)

紫外線、非ヒ素系殺虫剤など

グループ2B(ヒトに対する発癌性が疑われる)

ウレタン、スチレン、ガソリンなど

グループ3(ヒトに対する発癌性が分類できない)

グラスウール、コーヒー、お茶など

グループ4(ヒトに対する発癌性がおそらくない)

カプロラクタムのみ

検討している断熱材について、一度主成分の発がん性のリスクの有無を確認し、リスクの認識をしておいたほうがいいでしょう。

ホルムアルデヒド発散等級

住宅の汚染化学物質であり、発ガン性物質であることが認められてもいるホルムアルデヒドは、結膜炎や咽頭炎、皮膚炎の原因となります。断熱材でも製品として加工される際にホルムアルデヒドを使用しているケースがあります。

ホルムアルデヒド発散等級とは、「住宅性能表示制度」で決められている項目の1つで、素材から発散されるホルムアルデヒドの濃度がどの程度かを表す等級です。建築材料ごとに等級の明記が義務付けられており、検討されている断熱材にホルムアルデヒドが使用されているかどうか、確認するようにしましょう。

表示記号

内装仕上げの制限

F☆☆☆☆

制限なし

F☆☆☆

使用面積が制限

F☆☆

使用面積が制限

F☆

使用禁止

 

耐火性能

また、万が一自宅や隣家で火災が発生した際、断熱材の耐火性能は安全性に大きな影響を与えます。繊維系の断熱材では、グラスウールなど主原料に無機質を使用している断熱材は燃えにくく、耐火性に優れています。

発泡プラスチック系の断熱材は、フェノールフォームは耐火性があると言われていますが、全体的に可燃性のものが多く、それらの断熱材は一般的に難燃化の対策がとられてはいるものの、火元の状況によっては一気に周辺に燃え広がってしまう可能性があります。

また、素材によっては燃焼した際にシアンなどの有毒なガスが発生するものもあります。耐火性・火災時の安全面を重視するのであれば、より燃えにくく、燃焼時に有害物質が発生しない素材を選びましょう。

さいごに

断熱材の選び方について、注目するべき3つの性能について紹介してきました。これらの性能はどれも必要不可欠な性能ですので断熱材を選ぶ際は是非注目してみてください。

最後に、断熱リフォームの匠では床下や天井の断熱リフォーム事業を展開しています。もし「床下や小屋裏の断熱リフォーム」を行うことを考えておられるのであれば、私どもで何かお力添えをできるかもしれません。「断熱リフォームを検討しているがここが分からないので教えて欲しい」といった疑問であれば何でもお答えさせていただきますので、是非下記のお問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。