「気流止め」とは?断熱リフォームの最重要ポイントを解説|断熱リフォームの匠
コラム
投稿日 2018.06.04 / 更新日 2024.09.20
断熱リフォーム断熱材
「気流止め」とは?断熱リフォームの最重要ポイントを解説
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矢崎 拓也
環境省認定うちエコ診断士
大学卒業後、断熱にまつわる資格をいくつも取得し、自ら調査や補助金申請の手配、セルロースファイバーの施工から窓の取付まで行える業界でも異色の人物。「日本中の住宅性能の低さを解決したい!」と大きな夢を原動力に戸建住宅の断熱リフォームに取り組む。
「気流止めって具体的にどういうものですか?」
「断熱リフォームでは隙間を塞ぐことが大切と聞きましたが…」
この記事では、断熱リフォームにおいて欠かせない要素である「気流止め」について詳しく解説します。
気流止めという言葉はあまり耳慣れないかもしれませんが、実はこれが断熱リフォームの成功を左右する重要なポイントです。断熱性能を高めるために、ぜひ知っておいてほしい基礎知識です。この記事を通じて気流止めの重要性を理解し、リフォームを検討する際の参考にしていただければ幸いです。
目次
気流止め(きりゅうどめ)とは
気流止めとは、簡単に説明すると壁の中を空気が自由に移動しないようにするための「仕切り」のことです。主に躯体内の空気の流れ「気流」を遮断する役割を持っています。
具体的には、床下からの冷たい空気が壁内を通り気流となって上がってこないようにし、壁の中の空気が屋根裏などに流れ込まないようにすることが目的です。この対策を施すことで、建物全体の断熱性能が向上し、室内の快適さを保つことができます。
近年では、断熱リフォームの際に気流止めを行うことで断熱性能の強化を図ることが増えています。
気流は住宅の厄介者!?
日本の木造住宅では、換気口から入り込んだ外気がそのまま壁内を通って小屋裏まで流れ込むような構造になっているケースが非常に多いです。この空気の流れのことを気流といいます。
建物の中を通る空気と聞くと「換気がよくなる」といったいいイメージを持つかも知れません。しかし実は建物にとって気流はとても厄介な存在で、良いことは全くありません。2つの具体的な理由を挙げてみましょう。
気流が厄介な理由①:断熱材の効果が発揮されない
実は、床下の空気が壁の中に流れ込むことと室内の寒さには深い関係があります。床下は通気口や基礎パッキンを通じて外部と繋がっており、その空気はほぼ外気と同じ温度です。冬場、この冷たい空気が壁内に入り込み室内の熱をどんどん奪ってしまうのです。
「壁の中に断熱材を入れておけば問題ないのでは?」と思うかもしれません。しかし、冷たい空気は断熱材の隙間を通り抜けて流れてしまいます。断熱材が効果を発揮するのは、壁と冷たい空気との間にしっかりとクッションの役割を果たすときです。
もし断熱材と壁の間を冷たい空気が常に流れていれば、断熱材はその機能を十分に発揮できません。どれほど高性能な断熱材を使用しても、気流止めがなければその断熱効果は大きく損なわれてしまいます。
気流が厄介な理由②:カビや腐れの原因になる
建物に空気の流れがあるということは、一見カビの発生を防止するようないいイメージがあるかもしれません。しかし実は、むしろ気流が原因となってカビや腐れを引き起こしてしまう場合があります。
床下から冷たい空気が床下の湿気と共に壁内に入ってきて、暖房されて暖かくなった壁の石膏ボードの裏面を通るので、温度差により石膏ボードの裏側の壁の中などで結露(内部結露)が発生します。
結露は木材を腐らせ、壁の中でカビ等を発生させてしまう要因にもなります。木材がカビや腐朽などにより劣化すると、建物の強度そのものに影響を及ぼすこともありますので、そもそも冷気流を壁の中に入れない方が正しい家の状態なのです。
古い工法を好む大工さんの中には、「壁に断熱材を入れると家が腐る」と言う人もいますが、これは半分正しい考えです。冷気が入り込む状態で断熱材を詰め込むと、確かに良くありません。
ただし、気流止めがされていない住宅は言わば「隙間風だらけの家」ですので、実際に住んでいる人は寒くて過ごせないのではないでしょうか。正しく断熱材を詰め、気流止めをしっかりと施した住宅こそ、快適で正しい状態と言えます。
気流止めが必要な家が多い理由
住宅にとって非常に大切な存在の気流止めですが、日本のほとんどの家では気流止めの施工がされていません。原因となっているのは、気密性能に対する基準値の低さです。
海外では非常に厳しい気密性能の基準が定められており、基準を満たしていない住宅には罰則まであるほどです。一方、日本の基準は甘く、その基準を満たしていない住宅だったとしても罰せられることはありません。確かに気密性能の低さは建物の倒壊に繋がるような欠陥ではありません。
しかし断熱性能が重要視されている現代の住宅において、気流止めをはじめとした気密の対策は必要不可欠です。ただ単に性能の高い断熱材を使えばいいという訳ではなく、しっかりと気密のことを考えて気流止めの対策をすることが、住宅をより長持ちさせ住宅環境の改善にも繋がります。
気流止めはどこの気流を止めるの?
では、気流止めはどこの空気を止めるのでしょうか。それは床下と壁内間の通気と小屋裏(屋根裏)と壁内間の通気です。この壁内の通気のみの気流を止めることがポイントです。
そもそも、なぜ気流止めのない壁内でカビや内部結露が発生するかというと、湿気を含んだ空気が壁の中に入ってしまう状態にあるからです。
築25~30年以上の住宅は、多くの場合は床下が露地のまま家が建てられています。この土から湿気が上ってきたり、あるいは湿度の高い季節には基礎換気口から床下に湿気を含んだ空気が流れ込んできたりします。
この湿気は本来、換気口から入ってきても反対側の換気口から排出されるため大きな問題にはならないはずです。ところが、床下から壁の中に空間がつながっているままだと、本来は流れ込んで来ないはずの湿った空気が床下の換気の流れを無視して壁の中まで入ってきてしまいます。
気流止めは、この「もともとは入ってこないはずなのに入ってきてしまっている湿った空気」を防止することに繋がりますので、むしろ結露やカビの発生は抑えられることになるのです。
壁内の空気の流れを止めることでデメリットはありません。気流止めをすることで、安全に住宅の性能を高めることができるのです。
気流止めの方法
気流止めの作業は床下や小屋裏の壁につながる隙間を遮断することだと解説しました。では、どうやって気流止めを施すのでしょうか。ここからは気流止めの施工方法を解説していきます。
気流止めの素材
断熱リフォームにおける気流止めは主に4通りの方法があります。具体的には、木材や気密テープ、袋入り断熱材、発泡ウレタンフォームを使用する方法です。
しかし、これらの材料にも向き不向きがあります。断熱リフォームを行う方法には、床や壁を解体して施工する解体リフォームと床下や小屋裏に作業者が直接入って施工する非破壊リフォームの2つがあるからです。
この2工法における気流止めの素材の相性を表にすると以下のとおりです。弊社(断熱リフォームの匠)も採用する非破壊断熱リフォームは解体断熱と比較して施工のハードルが低い工法ですので、非破壊断熱を基準に見ていきましょう。
解体断熱 | 非破壊断熱 | |
---|---|---|
木材 | ◯(スケルトン状態まで壁等を剥がせば木材で隙間を埋めることができる) | ✕(床下や小屋裏からの設置は困難) |
気密テープ | △(数ミリから数センチの隙間を塞ぐのに適する) | △(他の方法で気流止めが出来ない僅かな隙間に有効) |
袋入り断熱材 | ◯(大きい隙間を埋めるのに適する) | ◯(床下や小屋裏からの気流止めに最も適する) |
発泡ウレタン(缶) | △(他の方法でも十分作業がしやすい) | ✕(床下からの施工は非常に難しい) |
やはり、床下や小屋裏に直接入って断熱材を施工する非破壊工法の場合、選択肢は非常に絞られます。私の経験上、木材を使用して床下から気流止めを施工するのは非常に困難です。
表のとおり、壁や床を剥がす大工事なら木材は有効だと思います。しかし、既存の床を壊さずに床下から気流止めを施工するとなると、小さく入り組んだ隙間を木材で埋めていくのは現実的に見ると非効率です。
発泡ウレタンフォームは細い隙間に使う場合とても良いのですが、床下から斜め上方向に向けて吹き付けるのが非常に難しい作業となります。床下空間の特性上、ノズルに土が付着して詰まることもあります。また、冬場は寒さの影響で上手くウレタンフォームが発泡しないため、取り扱いには慣れが必要です。
そのため断熱リフォームの匠では気流止めに袋入りのグラスウール断熱材を主に使用しています。
床下の気流止め
床下の気流止めは主に2箇所がメインとなります。一つは先程から度々ご紹介している壁下の隙間。もう一つが配管などの床貫通部です。
壁下の隙間には、袋入り断熱材を詰めて施工します。防湿層がある断熱材の場合は防湿層側を山折りにして施工することで気流を止めることが可能です。
外壁沿いの壁内には断熱材が入っていることがほとんどですが、断熱材があるからといっても気流止めが必要ない訳ではありません。気流止めがない状態で壁内に断熱材を入れても、空気がその合間を通り抜けてしまうため、断熱材は本来の性能を発揮できなくなってしまいます。
間仕切り壁(部屋を仕切る壁)の下にも空気の通り道が存在します。間仕切り壁内には断熱材は普通入っていませんので、特に空気が流れやすい場所です。ここはしっかり気流止めを施工する必要があります。
配管についても隙間ができやすい場所です。床をくり抜かれるため、配管を通した穴にどうしても隙間ができてしまいます。そのような場所には、気密テープなどを使い隙間を塞ぐ必要があります。
小屋裏の気流止め
小屋裏の気流止めは壁の隙間を埋めるのが基本です。外壁沿いや間仕切り壁がある場所を上から覗くと隙間があることが分かります。その隙間に断熱材を充填するのが気流止めの方法です。
小屋裏は外壁沿いを確認するのは構造的にむずかしいのですが、基本的に床下と同じく隙間があります。床下から直接空気が小屋裏まで流れてくるのが上の写真を見れば分かりますよね。
また、夏場の強い日差しに照りつけられると、小屋裏空間は50℃から60℃近くの高温になります。気流止めが無いと60℃近い温度の空気が壁内に直接伝わることになります。夏に天井や壁沿いが暑く感じるのはこのためです。
壁の隙間には、床下と同様に袋入り断熱材を施工して気流止めを行います。見た目はすごく簡単な作業に見えますが、気流を止めることを考えて施工しないと意味がありません。気流止めに関しては見栄えよりも性能を優先して施工をすべきでしょう。
まとめ
気流止めについてご説明しましたがいかがでしたか。作業そのものはとっても地味なものですが、気流止めは断熱リフォームにおいて非常に重要な施工です。
一般的な木造の住宅では、その構造的にほとんどの家屋で気流止めが不十分なのは明らかです。これは国の客観的なデータだけではなく、実際に私たちが行っている断熱診断でも感じているところでもあります。
せっかく断熱リフォームをしても気流止めが見逃されていたら全く意味がありません。しかしながら気流止めについてはあまり知られていないですし、住宅のプロでもまだまだ詳しい人は少ないです。少しでも正しい知識が業界に浸透し、しっかりと断熱材の恩恵を受けられる人が少しでも増えたらいいなと思っています。
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1974年の創業から50年を超える歴史を持ち、住宅メーカーなど1200社以上の住宅のプロとも取引実績を持つ当社。日本でも数少ない断熱リフォーム専門店として、断熱工事に関するあらゆるお困りごとを解消すべく、技術とサービスを磨いて参りました。断熱性能は快適な暮らしを守る影の立役者。私どもはその裏方の仕事に誇りを持ち、期待を超える品質でお応えします。
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