室温と健康の「切っても切れない」重要なつながりとは?|断熱リフォームの匠

コラム

投稿日 2022.06.04

建物・暮らしの知識

室温と健康の「切っても切れない」重要なつながりとは?

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矢崎 拓也

環境省認定うちエコ診断士

大学卒業後、断熱にまつわる資格をいくつも取得し、自ら調査や補助金申請の手配、セルロースファイバーの施工から窓の取付まで行える業界でも異色の人物。「日本中の住宅性能の低さを解決したい!」と大きな夢を原動力に戸建住宅の断熱リフォームに取り組む。

こんにちは。《断熱リフォームの匠》の矢崎です。

今回は室温と健康との関係についてお話ししていきます。

寒い部屋で過ごすことは、単純に快適ではないだけでなく、身体の健康上のリスクも高めてしまうことはご存知でしょうか?

近年の研究では、寒さは健康にとても悪い影響を与えることが分かっています。

「寒さは我慢すればいい」と考えていらっしゃる方は決して少なくないと思います。

特に年配の方などは、若い頃から冬は寒い中で過ごしてきた経験があるため、それが当然のことと思えるのも納得できる一面ではあります。

しかしながら、高齢化が進む中で問題視されてきた、いわゆるヒートショックを始めとした身体の異常は、実はかなりの割合で住宅の寒さとの関連性が指摘されています。

今回は寒さが私たちの身体にどのような影響を与えるのか、どのように対策するべきなのかをご紹介していきます。

部屋が寒いと大きくなる健康リスク

寒い部屋での生活でまず懸念されるのが、高血圧のリスクです。特に注意しなければいけないのは高齢の方々で、健康的な生活に支障を来す危険性があります。

高血圧症は心肥大、冠状動脈硬化、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、脳底部の動脈瘤、など心臓や脳の病気のリスクを増加させます。

そして部屋の寒さは、血圧上昇の原因となってしまうことが分かっています。

国土交通省の調査によると、室温が20℃から10℃まで低下すると、80代の男性の血圧は10.2上昇、女性は11.6上昇するというデータが発表されています。

これはかなり危険な上昇率であり、一般的な高血圧の原因と言われている生活習慣と比較してみると、よく分かります。

  • 毎日飲酒   :しない人より3.6上昇
  • 野菜を食べない:食べる人より2.9上昇
  • 喫煙     :非喫煙者より3.1上昇

 
生活習慣による健康の悪化を大きく上回る血圧上昇を招いていると聞くと、少し驚きですよね。室温が身体に与える影響がいかに大きいのかが分かるデータではないかと思います。

たとえ健康な人であっても、暖房したリビングから寒い廊下に出ただけで、血圧が10以上も上昇したら、それだけでも身体への負担は相当なものになり、いわゆるヒートショックを引き起こす大きな原因となります。

日本の実態は・・・

WHO(世界保健機関)では、生活する人の健康を維持するため、室温を18℃以上とすることを勧告しています。また、イギリス、ドイツ、フランス、スウェーデンといった国々では、住宅の寒さに関する法律もしっかりと制定されています。

例えば、イギリスでは室温が18℃を下回る賃貸住宅には解体命令が出されることもありますし、刑務所でも暖かい場所で生活することは「人権」と考えられており、暖房をきちんと考えられた設計になっています。

では、現在の日本の住宅では室温はどのくらいなのでしょうか?これは残念ながら良い数字とは言えないのが現実です。

国土交通省が2019年に実施した、平均年齢57歳の住宅2190戸の冬の平均室温を調査した結果は以下のとおりです。

  • 居間:平均値16.8℃(18℃以上は全体の61%)
  • 寝室:平均値12.6℃(18℃以上は全体の10%)
  • 脱衣所:平均値12.8℃(18℃以上は全体の11%)

 
これによると、多くの家がWHOの基準を下回っていることがわかります。

そして日本の約4割の住宅は、過ごす時間が長い居間(リビング)ですら18℃を割り込んでいることから、決して健康的な空間ではないと指摘されています。

室温が12℃を下回ると特に危険!

18℃を下回ると健康に悪影響が出ますが、さらに室温が12℃を下回ると特に危険だと言われています。

低温状態によって体は緊張状態となり、寝つきが悪くなります。自律神経も乱れて体の末端部と心臓とのリズムが合わなくなり、血液循環の機能が低下して脳の血行も悪くなり、活動の意欲も低下してしまうとされており、12℃を下回ることは回避すべきであると言われています。

海外の研究では、12℃以下の部屋で寝ている子供は喘息のリスクが上がるという報告もあります。

日本の住宅においては、多くの人がこういったリスクを知らず知らず背負ったまま生活していることを意味しており、基礎疾患を持っていない場合でもヒートショックなどの症状を引き起こすリスクが非常に高いことを示しています。

日本では生活習慣の改善こそが健康の秘訣だと言われますが、実態として生活空間そのものが健康に悪影響を及ぼしていることが研究によって明らかになりつつあるのです。

健康で過ごせる家にするには?

では、健康に生活する上で大切なことはなんでしょうか?

答えは明確であり、「暖かくして過ごす」ことです。

こう書くと「厚着をして過ごせば良いの?」と考える方もいますが、厚着をすると身体が締め付けられてしまい、血行が悪くなるため逆効果との指摘もあります。

冬に部屋を暖かくする方法として最もメジャーなものが暖房です。

エアコンや石油ストーブなど、室内に熱を送り込む器具が現代ではどこの家にもあると思いますので、適切に使っていく必要があります。

ところが、エアコンなどで生み出された熱は知らない間に外に逃げてしまっています。冬の寒い時期には、窓が結露でびしょびしょになっていることが多いのではないでしょうか?

これは室内の暖かさが窓を通して逃げてしまい、冷えた窓で水蒸気が水に変化するため起こる現象です。熱が逃げてしまえば、室内は結局寒い空間に戻ってしまいます。

暖かい部屋を維持するには、ずっと連続して暖房を運転し続ければ問題は解決します。しかし今度は、暖房費用がかさんでしまう結果を招きます。

「毎月の電気代が高くて困っている」という心当たりはないでしょうか?

特に近年は原油価格の高騰が深刻であり、電気料金も値上がりをしているため、暖房を「ガンガン」使用し続けるのは賢い選択とは言えない状態となっています。

部屋の暖かさを維持するためには?


重要なのは、室内空間そのものを暖かくすることであり、そのために欠かせないのが住宅の「断熱」です。

例えば、「夜にエアコンを切って寝ると、次の日の朝とても寒い・・・」「いくらエアコンをつけても足元の冷えが取れていない」といった経験があれば、それは建物の断熱性能が低い証拠です。

暖房器具と断熱とは両輪の関係にあります。どちらかが欠けていても暖かい家を作ることはできないのです。

先ほどもご紹介しましたが、日本の多くの家では断熱性能が不足しているのが現状です。いくらそのままで暖房だけを連続運転しても、決して良いことはありません。

建物の断熱性能は、内窓の取り付けや床下・小屋裏への断熱材の再充填で性能を大きくあげることが可能です。

家の性能そのものを向上させるリフォームのことを【断熱リフォーム】と言いますが、この断熱リフォームは家に住んだまま工事が行えることが大きなメリットです。

「断熱リフォーム」についてもっと知りたい方はこちらのコラムをぜひお読みください。
家の寒さが解消『断熱リフォーム』とは?お家を賢く温める方法を紹介

もし家の寒さにお困りでしたら、一度断熱材のリフォームを検討してみてはいかがでしょうか?

ここまでお読みくださり、ありがとうございました。

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